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zoom RSS 溝口徹著「氷結の岩」

<<   作成日時 : 2014/02/20 06:56   >>

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 溝口徹君。キタが1992年春から94年秋まで北海道新聞社会部デスクをしていたとき一緒に仕事をした若手記者でした。わたしには目立たないこつこつ仕事をする記者という印象しかないが、20年ぶりに私の前に立派に成長した姿を現した。ドキュメンタリー小説「氷結の岩」(響文社刊1600円+税)の著者として。

 
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 溝口君は2003年読売新聞社に移り、現在は新潟支局の報道デスク。43歳になったという。

 本書は道新社会部時代の1996年2月に取材した、北海道古平町でのトンネル崩落事故を描いた。国道229号豊浜トンネルの坑口付近で巨大な岩盤が落下、走行中の乗合バスと乗用車の計2台を押し潰し20人の命を奪った惨事だった。

 官僚機構のメンツ優先で進まぬ救出作業、犠牲者への国家賠償には応じるが、事故の因果関係では一切責任を認めない理不尽な国側。著者をモデルにした地方記者が「犠牲者に寄り添う」姿勢で、現地住民の思いに視点をおいて事故を克明に記録していく。

  トンネルの設置場所について、そもそも安全性を損なう地層だとする学者見解は国の責任を問う裁判ではまったく無視された。

 この作品を通読して感じること。
 日本、とりわけ北海道では、地域経済浮揚という大義名分で道路、河川などの公共事業が住民の希望のあるなしにかかわらず次々と行われている。しかし、実は、政治家の人気取りであったり、「はじめに予算消化ありき」の事業であって、完成直後には一見磐石の構造体に見えても、実は不十分な事前調査があったり無理なルート設計があったりして、共用後の安全性破綻の罠が埋め込まれているのではないか。

 これは今日の原発問題にも通じる。

 記者生活20年余のベテラン記者溝口君は数々の事件事故取材を経験してきてなぜ、いま、新人記者のころに遭遇したこの事故にこだわったのか。また、なぜ小説の形式を取ったのか、などを考えながら読ませて頂いた。

 その答えは私なりに理解できた。

 @新聞記者が寄り添うべき「側」はなんであるか
 A国家とはなにか

 これらを教えてくれる、ほろ苦くも貴重な原体験が1996年のこのトンネル崩落事故だった。小説の形式をとったのは取材当時見えなかった事故の本質を捉え返す上で補うべきものを、20年の記者生活を通じて得た「洞察力」で補おうとしたからだと思う。

 タイトルの「氷結の岩」には、1996年の事故以来、心のなかで氷結して沈潜したままになった巨大な岩を、時間をかけて解き明かして行こうというした記者魂が込められているのだろう。

 上の@Aを考える上で、本書が提示したものは極めて現代的なテーマだと感じた。ぜひ多くの人に読んでいただきたい。

  締切時間が切迫して渦中の家族から姑息な手段で情報を取ろうとして、逆鱗にふれ、その信頼を取り戻そうと誠実にフォローする姿には、我が記者人生を振り返って、ほろっとしてしまった。

 先週土曜日、「氷結の岩」と同じ出版社から「豪腕新伝説」を上梓した黒田伸君とセットにした出版記念会が京王プラザ札幌で開かれた。 

「キタさんのことはよく憶えていますよ。よさこいソーランの問題をまとめ記事にするとき、朝まで付き合ってデスクしてくれました」と、若い頃とすこしもかわらぬ童顔の溝口君。

 不明にも、わたしは多勢のなかで目立たない新人記者としか見抜けなったが、その粘り強い取材力と「民衆に寄り添う」ヒューマニズムを見抜き、励ましてきた先輩記者もいたことを、本書で知った。

 ジャーナリストとして円熟の真っ只中にいる溝口君。新聞づくりの現場で厳しいルーティンをこなしながら次なる著作を期待しています。

 黒田君もまた、社会部時代の仲間。「豪腕新伝説」を読み次第、感想を書いてみたい。

 

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Kita, WHO?

1948年大阪生まれ。元北海道新聞記者。11年3月から13年3月まで、JICAシニアボランティアとしてモンゴル国立農大(ХААИС)ダルハン校でエコツーリズムと基礎日本語を教えた。趣味は渓流釣り、映画、クラシック音楽鑑賞、漢字書道。書号は景泉 にほんブログ村 海外生活ブログ モンゴル情報へ
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