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zoom RSS 横着の「も」もはやパンデミック状態

<<   作成日時 : 2015/08/25 06:13   >>

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 下の切り抜きは23日北海道新聞朝刊スポーツ面のべた(一段見出し)記事だ。傍線筆者。「チーム唯一の2安打『も』2度の好機に凡退」「九回1死一塁で代打『も』一ゴロ」。『』でくるんだ「も」の用法は近年顕著になったマスコミ業界による日本語破壊の表現であり、使用をやめるよういま一度、提言したい。


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北海道新聞8月23日朝刊スポーツ面。小さい記事だが、「横着の『も』2連発
 
 新聞では元来、「名詞+も」に、ふたつの用法があった。「かつ丼も天丼も食いたい」の「も」。これは一般的な用法。もう一つは、「あす、トップ会談も」という、近い将来生じる可能性が強いが、なお流動的な要素がある場合などに使う。これは新聞見出し以外ではあまり見られない用法だった。

 そして3つ目の「名詞+も」が近年、急激に台頭してきた。こいつがクセモノだ。 

 私が問題視する「チーム唯一の2安打『も』」の生成過程を振りかえるとー。
 まず日本語にあった文語的表現、「奮戦するも及ばず」のように動詞の連体形+「も」で従属節において「〜したにもかかわらず」(するにもかかわらず、ではなく)を意味し、逆接的に主節に続く。

 まず、この動詞の連体形の語尾が省略され、「奮戦も及ばず」という表現が新聞の見出しに現われはじめた。私の記憶では1990年代だ。1994年秋から96年夏まで私が整理部デスクの職にあったとき、このことに気付き、なにか違和感を感じたが、「まあ、いいか」というのが、部内の雰囲気ではあった。



 「見出しは引用と要約により、簡潔・的確にまとめた『記事』といえる。省略した助詞や語尾は読者に補ってもらうことを前提に作る」
(2002年発行、「北海道新聞整理部・地方本部作成の「新聞を作る −整理記者入門ー」8ページ)

 百歩譲って、見出しについてのこの考え方に異論を挟まないことにしよう。しかし、見出しの世界から大きくはみ出し、本記記事として「メンディ7四球も7勝目」(8月13日、北海道新聞スポーツ面)まで行ってしまうと、話は別だ。 


メンドーサ投手はこの日の登板で7つの四球を出したが、それでもなんとか7勝目を挙げることができたーという意味を、「も」で強引に表現してしまう。傲慢であり、横着というほかない。

 助詞も動詞語尾もみな、省いた文字は読者に補ってもらう。その結果、文のかたちは「かつ丼も」の「も」と変わらなくても、読者が補ってください、というわけだ。 私はこの「も」を勝手に「横着の『も』」と名付けた。



 
  横着の「も」による日本語破壊は、どんどん進化した。まず、見出しだけにとどまらず、本記に、つまり文書の中でも使われるようになった。
 
 よく考えると、そもそも「〜するも」などという表現は文語体である。だから新聞での文章においては、特別な効果を狙って、意図的かつ例外的に使うのは許されるがl、慣用的、恒常的、反復的に使うべきではない、と思う。
 
 北海道新聞記者が、記事原稿を書くにあたって、手本にするハンドブックが2冊ある。@記者ハンドブック 新聞用字用語集」(共同通信社刊)A編集手帳(北海道新聞社刊)だ。
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私にとって編集手帳(左)と記者ハンドブックは北海道新聞社時代ののバイブルだった

 @の2008年版9ページ「新聞記事の大原則」4項目の最初に「一、新聞記事は、日常一般に使われる標準的なわかりやすい口語体を使い、文語的表現は避ける」とある。「〜するも」は口語体では断じてない。

 横着の『も』の進化、発展は続く。

 動詞の連体形語尾の省略から、やがて名詞+『も』に敷衍され、さらに使用頻度が増えた。その例が、上の記事写真のような表現だ。

 「代打する」「安打する」という日本語はまだないから、これは動詞の連体形語尾の省略ではなく、明らかに名詞+『も』だ。そして、この横着の「も」の2連発。

 北海道新聞も、他の新聞同様、横着の「も」のパンデミック状態に入ったことががわかる。

 「横着の『も』は新聞原稿にとどまらず、テレビのスポーツニュースなどで、アナウンサーが「大谷は好投もむくわれませんでした」などと平気でしゃべっています。だいたい、話し言葉で「なになにするも」などというべきではない。日本語の先祖返り。いや過去にも、ふつうの日本人が「〜するも」など会話の中で使ったことがあるか。武士や軍人が気取って書状や日記に使ったことはあるだろうが。つまり、この表現は生まれたときから文語体、もしくは文語調なのだ。

 これまで、私はブログや、Facebookに、この「横着の『も』」に、しつこいほど書いて文句を言ってきた。なぜか。それは新聞を読んで、日本語の参考にする子供たち、若者たちがいるからだ。

 上記のAには「新聞記事は子どもたちからお年寄りまで、さまざま人が読んでいる。分かりにくい官庁用語や専門用語はできるだけかみ砕いてつかうべきだ」14ページ「記事の書き方 ◆わかりやすい文章」)とある。

 分かりにくく、しかもまだ文法的に認知されたとは言いがたい「横着の『も』」は、難解な官庁用語や専門用語よりなお罪深いと思う。

北海道新聞綱領
 4.品位と責任を重んじ、平明で親しみある新聞を作る
 
 この「横着の『も』は北海道新聞編集綱領にも悖(もと)ると思う。

 北海道新聞は東京紙紙や全国の地方紙に劣らず、NIE(Newspaper In Education) 、「教育に新聞を」の活動に熱心に取り組んでいることは承知している。

 日本語や文章表現の模範になるような記事をこどもたちに提供するために、他社に先駆けてこの「横着の『も』を新聞紙面から一掃してほしいと願わずにはいられない。

 私はこれまで、こうした考え方を直接、北海道新聞に伝えたことは一度もない。それは苦情窓口である「読者センター」などに持ちこんで、その対応あたる後輩諸君の心を煩わせることを避けたためだ。
 
 現役社員時代、読者センターで、苦情や注文を承る担当者がどれほど、難儀しているか知っているため。ブログやFacebook の読者のなかに、マスコミ関係者もいるはずだから、なんらかの形で伝わっているだろう、と思っていた。

 しかし、やはり、きちんと指摘したほうがよいだろうと、最近思い始めている。 もう少し整理して届けようと思っている。
 
 なお、誤解してほしくないことがある。

 言葉は生き物であり、時代とともに少しずつ変化していく。そのことすら受け入れない、という考え方には、私は立ってはいない。「はじめに文法ありき」、文法にそぐわない表現は認めない、というわけでもない。

 「新しい言葉、新しい書き方、新しい視点が若い記者から生まれてほしい」(前出北海道新聞編集手帳14ページ)にも異議を唱えるつもりはない。

 しかしながら、記者個々がその新語、新しい表現を記述するに当たっては@自分だけの私(わたくし)語ではなく、社会における共通語としてふさわしいかどうかA読み手に意味があいまいに受け取られないかどうかーについて常に厳しく自省する必要がある。

 私が、「文法破壊はまずい」というのは、その時代時代の文法を守ることが、共通語によるコミュニケーションと相互理解の必須条件となるからだと思っている。

  社会に流布する流行語や新しい表現が、たとえ誤用であっても、「お年寄りも子供も理解できる」までに慣用化してしまった、という時初めて新聞紙面に採用する。それぐらいの慎重さ、言いかえれば「言語の保守性」を新聞は持つべきだと思う。 保守とは前に進まないことではなく、「見極めながら、ゆっくりと進む」ことだ。

 すくなくとも、新聞が日本語文法破壊のお先棒をかつぐことだけは避けるべきだと常に思っている。

<まとめ>
横着の「も」の生成プロセス 6つのステップ
原形     〜するも
              文語体   <例>       好投するも  報われず

   

ステップT  新聞見出し       好投も報われず(動詞の語幹+も)
ステップU  新聞見出し       1安打も敗戦投手(名詞+も)
ステップV  新聞記事(本記)に拡大 チーム唯一の2安打も2度の好機に凡退
ステップC  <テレビ>スポーツニュースでアナウンサーのMC
                に「 横着の「も」登場

ステップX  (既に現象が起きているか確認できないが、近い将来は確実出現           
          が予測される)
          新聞の一般ニュース、テレビの一般ニュースや天気予報
           「一日中晴天も、気温は下がるでしょう」
ステップE   一般人の文章に横着の「も」が頻出する?

 いまはステップCあたりまで来てしまった。                


 

 

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Kita, WHO?

1948年大阪生まれ。元北海道新聞記者。11年3月から13年3月まで、JICAシニアボランティアとしてモンゴル国立農大(ХААИС)ダルハン校でエコツーリズムと基礎日本語を教えた。趣味は渓流釣り、映画、クラシック音楽鑑賞、漢字書道。書号は景泉 にほんブログ村 海外生活ブログ モンゴル情報へ
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